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pipal 渋谷宇田川 スタッフブログ

2017-09-28-Thu

ソムリエ 鈴木亮介、生産者を訪ねて。vol.10

6日目。早朝からTGVで長距離移動、いざアルザス、ストラスブールへ。
ストラスブールから南下しノータルテンという村、
あの『ドメーヌ ジュリアン メイエー』の元へ。


のどかな村。建物がカワイイです。


待っていると猫がお出迎え。空気がゆったりと流れている。
少しして、Tシャツ短パンという出で立ちで当主パトリックメイエーさんが迎えてくれました。
まずは恒例の挨拶を。
そして、
「ちょうどさっきまで畑仕事をしていたよ、今日はとても暑いけど畑も見たい?」
「もちろんです、よろしくお願いします!」


早速畑へ。太陽の光をサンサンと浴びて健全そのものの葡萄たち。


フロレゾン※1 がちょうど終わりヌエゾン※2 の季節。小さな葡萄の実が付いています。


パトリックが土を掘り返して見せてくれました。土はふかふかで簡単に鍬が入ります。中はしっとりとしていて有機的ないい匂いがします。
「しっとりしてるでしょう、もう10日も雨は降っていないんだよ。そしてこの香り、土が生きている証だよ。」
ちょっと別の畑を見せようと言って、別の方の区画に少しお邪魔して見せてもらいました。雑草は全くありません。除草剤や農薬を使用しているせいです。
「見てて」
パトリックが鍬を入れてもなかなか入りません、土がガッチガチです。
力を入れて掘り返してみるとそれは岩のようで乾燥し、全く湿り気はありません。
匂いを嗅いでみるとなんの香りもありません無臭です。生物が生きている気配が全然ありません。
パトリックの畑とは全く違います、でも距離でいうとホンの数メートル先の畑です。どちらが健全であるかは一目瞭然で、もはや疑問が湧いてきます、
「ナチュラルな畑の方がどう見ても良いのに、なぜ人はケミカルな物を使うのでしょう?」
「わからない、使わなければならないと思い込んでいるんじゃないかな。」


近所の方が通りかかって何やら挨拶を交わすパトリックさん。何だか素敵な光景です。


畑から戻り、テイスティングルームに。お洒落なワインバーの様な部屋を持ってるんですね〜、近所の方が飲みに来るそうです。ん〜、贅沢。


外は日が照りつける真夏日ですが、ひんやりとしたカーブの様な雰囲気で、早速テイスティングをさせていただきます。


次々とジュリアンメイエーのワインが出される、そして幾つかのリースリングの飲み比べ。
驚いたのが、
パトリックさんは注いでくれたワインを指して
「これは一ヶ月前に抜栓したリースリングだ。どうぞ。」
なんて平気な顔でおっしゃる、
「え、一ヶ月?大丈夫なんですか?」
「飲んでみて。」
香りをとって口に含む、美味しい。確かに酸化を感じさせるマディラっぽい香りもあるし味わいにも酸化感はある、でもこれは美味しい。
それから新しいリースリングをその場で抜栓して注いでくれた。
「どうぞ。」
ジュリアンメイエーのリースリングだ。素晴らしい、さっきのワインはやはり変化はしている、でもそれは劣化ではない。どちらも美味しい。あれ?
「一般的には抜栓したワインは3~4日で飲みきるべきだと言われます。僕のレストランでは窒素ガス※3 を使用しているので物にもよりますが一週間程度は提供できますが、その程度です。一ヶ月前に抜栓したワインを楽しむというのはどうして可能なのでしょうか?」

「ナチュラルなワインは死なない。
確かに酸化防止剤を入れたワインは3~4日で劣化する、それは酸化防止剤を入れた時点でそのワインはもう死んでるからだ。その後は厚化粧をして見せかけを保っているだけだ。
この二つのリースリングを比べて欲しい、確かに変化はしている。でも、繊細でシャープな味わい、ミネラル感、真っ直ぐに長く続く余韻、その個性は同じだ。変化はしても死ぬことはない。葡萄が健全で力強ければそれでいい、余計なものはいらない。
人間だってそうだ、君も10年後はシワが増えたり太ったりと見た目は変化するだろう。でも君の魂は変わらない、同じ個性が生きている。その時々を楽しめばいい。ブランド物のスーツを着たり周りを取り繕う必要なんかない、人生もナチュラルでいい。健全な魂さえあれば。

それなのに人は色々なことをしなければならないという思いに駆られる。
葡萄の栽培には農薬を使わなければならない、除草剤を使わなければならない、醸造には酸化防止剤を使わなければならない、培養酵母を使わなければならない、と。
歳をとったら厚化粧をしなければならない、ブランドの腕時計を買わなければならない、高級な車に乗らなければならない、と。
本当はしなければいけない事なんか何にもない、本質を見据えれば実にシンプルだ。ワインも人生もナチュラルでいい。」

打ちのめされました。力強いその語り口調にパトリックさんの信念を感じます。

「すごい、素晴らしいです。本当にその通りだと思います。あなたの考え方、フィロソフィーは素晴らしいです。」
「ノー!」
突然とても強い口調で否定されて少し驚きました。何か気に触る事でも言ってしまったかな。
するとパトリックさん、


「Not philosophy. This is LIFE.」
ディスイズライフ! 超かっこいい、パトリックさん!
「あなたは、素晴らしい方です。」

とても素晴らしい話を聴けました。
彼のワインは素晴らしい、そしてまた彼の生き方も素晴らしい。


それから、なんと貴重な1999年のリースリングも飲ませていただきました。
このエチケットは初めて見た、僕がジュリアンメイエーのワインに出会う前のワインだ。
そして一緒に飲みながらテイスティングコメントを聴かせてくれました。
「私のリースリングには一貫した特徴がある。シャープな酸味、繊細で長く続く味わい。それはそうまるで日本刀の様な。」
「Like Japanese sword ! 」
なんとリースリングを日本刀に例えるなんて、
「繊細で、真っ直ぐに伸びるキレ。アタックからアフターまで繊細に真っ直ぐに。」
多分一生忘れません、
僕はジュリアンメイエーのリースリングを飲むたびにジャパニーズソードを連想し、またその話の時にパトリックさんが人指し指と中指を日本刀の様に振り下ろし、下ろすタイミングで「コッ」って舌を鳴らした音までを想起するでしょう。
ワインを飲むことがとても楽しい時間でした。


そのあとに、前年にルトンデスリーズやレヴィニョーといったラングドックやローヌの生産者達と一緒に仕込んだ貴重なワインも飲ませていただきました。
「去年は酷く不作な年だった。だからワインもほとんど造れずに時間が出来たんだ。おかげで友達と一緒にワインを造るという新しい事が出来た。BUT is GOODだよ。」
とニヤリと笑うパトリックさん。本当にワインを造る事が好きなんだろうなこの人は。
「でも販売出来るほどの量は造ってないからここでしか飲めないかな。」
「幸運です。BUT is GOOD ! 」


最後に奥様に撮影をお願いして記念撮影を。嬉しすぎて僕は笑顔が止められない様子です。
『ドメーヌ ジュリアン メイエー』
パトリックさん貴重なお時間を本当にありがとうございました。


※1フロレゾン:開花。花が咲く時期。
※2ヌエゾン:結実。葡萄の実がなる時期。
※3窒素ガス:抜栓してしまったワインが酸化してしまわないために使うガス。空気よりも重いのでボトルの中に入れるとワインの液面上にガスが溜まり酸素と触れ合わないようにしてくれます。
 

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